「ナフサ」から考える日本のものづくり。使用済みプラスチックが拓く「第二の原料供給網」

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2026年、中東情勢の緊迫化を受け、ナフサの供給動向が注目されています。

ナフサは、原油を精製する過程で得られる石油製品の一つです。基礎化学品や中間製品を経て、プラスチック、印刷インキ、塗料、接着剤など、さまざまな製品に使われています。普段は目に見えませんが、食品トレーや日用品のボトル、家電、自動車部品など、暮らしと産業の広い範囲に関わっています。

2026年4月3日の経済産業大臣会見では、原油やナフサを含む石油製品について、備蓄の放出や代替調達により日本全体として必要量を確保する一方、一部で供給の偏りや流通の目詰まりが生じているとの認識が示されました。

この出来事が浮き彫りにしたのは、単なる一時的な供給不足ではありません。日本のものづくりが、海外の資源と国際物流に深く支えられているという構造です。

日本の原油輸入に占める中東依存度は9割を超えています。また、2024年の石油化学用ナフサ輸入量に占める中東の割合は73.6%です。(出典:資源エネルギー庁、石油化学工業協会)国内で精製されるナフサも、出発点をたどれば、その多くは輸入原油です。

原油価格や為替、航路、各国の輸出政策など、遠く離れた地域で生じる変化が企業の調達条件に影響し、最終的には包装材の価格や納期となって私たちの日常に響いてきます。

ここで重要なのは、プラスチックの使用を一律に否定するのではなく、用途に応じた使用量の最適化と資源循環を考えるということです。軽く、丈夫で、衛生的に使え、複雑な形にも加工しやすいプラスチックは、今後も多くの場面で必要とされます。

いま私たちが向き合うべきは、「使うか、使わないか」という二元論ではなく、「必要な素材をどこから調達し、使い終えた後にどう次へつなぐか」という視点です。

海外から新しい原料を運ぶ従来の「一方通行の供給網」に加えて、国内ですでに使われたプラスチックを、もう一度ものづくりへ戻す。その流れを安定して動かせれば、日本には「第二の原料供給網」が生まれます。

循環経済(サーキュラーエコノミー)は、環境政策であると同時に、「調達の戦略」でもある

再生材という言葉から、「環境のために使う材料」を思い浮かべる方もいるかもしれません。

世界で循環経済が重視される理由は、環境負荷の低減だけではありません。OECDは、資源を効率よく循環させる経済への移行を、供給安全保障と競争力の観点からも重要だとしています。

供給安全保障とは、国際情勢などが変わっても、産業や暮らしに必要な原料を確保し続けられる状態のことです。一つの地域や輸送経路だけに頼らず、複数の調達手段を持つことが安定につながります。

企業にとっても、再生材を使う意味は環境対応だけではありません。海外から届く新品のプラスチックに加え、国内で循環する再生材を選択肢として持つことは、原料調達の複線化にもつながります。

日本でも、経済産業省は「成長志向型の資源自律経済戦略」で、循環経済への移行を経済成長や経済安全保障と結びつけています。海外からの調達を続けながら、国内のリサイクル資源も生かし、原料供給の選択肢を増やすという考え方です。

使用済みプラスチックも、その一つです。処分する側から見れば廃棄物でも、ものづくりの側から見れば、国内にすでに存在している材料です。ただし、回収しただけですぐに製品の原料になるわけではありません。

廃棄物が資源に変わるには、回収する仕組みと、産業が使える品質へ変える技術の両方が必要です。

回収しただけでは資源にならない。ものづくりとの間にある「品質の壁」

家庭から回収された使用済みプラスチックには、異なる材質や色が混ざり、においが残ることもあります。再生の過程で、強度などの物性が低下する場合もあります。

こうした消費者使用後のプラスチックを再生した材料は、PCR再生材(Post-Consumer Recycled material)と呼ばれます。国内で回収できる資源である一方、においや強度、品質のばらつきが用途拡大の壁になってきました。

原料が国内にあっても、製造現場が求める品質に届かなければ、継続して使われる資源にはなりません。

TBMが開発した高機能再生材「CirculeX(サーキュレックス)」は、使用済みプラスチックを、製造業が実際に検討できる品質のPCR再生材へ変えることを目指して開発されました。素材開発で培った配合・混練技術と、横須賀サーキュラー工場の洗浄・製造プロセスを組み合わせ、これまで新品のプラスチックなどが使われてきた製品でも、材料の選択肢として検討できる領域を広げています。

自社試験では、対象グレードについて、従来のPCR再生材やバージンPPを上回る曲げ強度と耐衝撃性を確認しています。※1
洗浄プロセスの改良により、比較対象とした容器包装プラスチック由来のPCR再生材と比べて臭気レベルが低減することも、自社試験で確認しています。※2 建築資材、物流資材、自動車部品、家具、家電部品などへの用途展開を想定しています。

※1 JIS K 7171(曲げ強度)およびJIS K 7111(シャルピー衝撃強度)に準拠した試験での評価結果(自社調べ)。物性値は代表値であり、保証値ではありません。
※2 熱線型半導体式センサにより、80℃×1時間加熱後の成形品の臭気レベルを測定(自社調べ)。測定値は代表値であり、保証値ではありません。

また、環境面でも、所定の条件による自社算定では、バージンプラスチック100%使用時と比較して、CO₂を含む温室効果ガス排出量を最大61%削減できると見込んでいます。※3

※3 自社算定では、CirculeX 1kg当たり最大6.43kg(最大61%相当)の温室効果ガス排出量削減を見込んでいます。横須賀サーキュラー工場の製造工程で実質再生可能エネルギー100%を利用することなど、所定の条件を前提とした数値です。

ただし、CirculeXの役割は、再生材の環境性能や物性を示すことだけではありません。家庭から回収されたプラスチックと、実際に材料を使う製造業。その間にある品質上の隔たりを埋め、国内の使用済み資源を、企業が現実的に検討できる原料の選択肢へ変えることにあります。

もちろん、環境性能が高いだけでは、材料は広がりません。
企業が原料を切り替えるときに見るのは、品質だけでなく、加工性、価格、供給量、納期などです。今使っている設備で成形できるのか。必要な量を継続して確保できるのか。事業として成立する価格なのか。

そうした条件を一つずつ満たして、再生材は「環境対応のための材料」から、企業が実際に調達できる材料へと変わります。

高機能再生材『CirculeX』

横須賀からつなぐ、循環型ものづくりのインフラ

資源循環は、一つの企業や一つの技術だけでは成立しません。
回収、選別、洗浄・異物除去、再生原料化、製品化。この流れを途切れさせず、繰り返し動かせる状態にすることが、循環型ものづくりのインフラです。

「第二の原料供給網」にするためには、研究室で一度高性能な材料をつくれるだけでは足りません。必要な品質の原料を、必要な量だけ、継続して供給できることが必要です。

神奈川県横須賀市にある横須賀サーキュラー工場では、回収された使用済みプラスチックなどを受け入れ、近赤外線を用いた自動選別、洗浄、異物除去を経て、再生ペレットを製造しています。ペレットとは、製品へ成形する前の小さな粒状のプラスチック原料です。

同工場は、国内でも大規模な処理能力と、再生ペレット生産能力を備えています。横須賀サーキュラー工場でCirculeXの量産体制を構築する計画です。

工場では、原料の状態に合わせて選別や洗浄、製造条件を調整し、においや物性を確認しながら品質の安定化を進めています。利用を検討する企業と用途ごとの要件をすり合わせることも欠かせません。

こうした現場での改善の積み重ねが、使用済みプラスチックを「回収されたもの」から「産業が使える原料」へ変えていきます。

さらに、循環を動かすには、自治体や回収・再生事業者、メーカー、ブランドオーナーなど、多くの主体の連携が必要です。TBMは回収、再生、再製品化をつなぎ、国内の資源が再びものづくりへ戻る経路を増やすことを目指しています。CirculeXは、その経路を具体化する一つの材料です。

TBMは、使用済みプラスチックに加え、CCU(Carbon Capture and Utilization:CO₂の回収・利用)を活用したカーボンリサイクルにも取り組んでいます。対象は異なりますが、これまで経済の外へ出ていたものを新たな資源として捉え、製造・供給までつなぐという考え方は共通しています。

横須賀サーキュラー工場

海外資源と国内循環資源、その両方を生かす

中東情勢をきっかけにスポットライトが当たった「ナフサ」は、私たちの暮らしが、遠くの資源とつながっていることを可視化しました。

次に考えるべきなのは、そのつながりを断つことではありません。海外から届く資源と、国内で循環する資源。その両方を生かし、ものづくりの選択肢を増やしていくことです。

使い終えた後を、ものづくりの「終点」ではなく「次の原料供給の入口」にする。

その仕組みが各地で動き始めれば、国内で回収・再生された使用済みプラスチックを、ものづくりを支える国内循環資源として活用できる可能性が広がります。

TBMは、国内で資源がめぐる仕組みを、技術と現場、パートナーとの連携を通じて育てていきます。CirculeXの詳細は、TBMコーポレートサイトをご覧ください。


出典資料・参考資料:
経済産業省「赤澤経済産業大臣閣議後記者会見概要」
資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年版)」
石油化学工業協会「石油化学用原料ナフサ」
OECD「Resource efficiency and circular economy」
European Commission「Circular Economy Action Plan」

▼CirculeXについて

▼TBMのコーポレートサイトはこちら

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