【ELV規則発効】自動車に適した再生材の種類と、容器包装由来PCR「CirculeX」の可能性

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【この記事のポイント】

・ELV規則発効: 欧州市場向け車両で求められる再生プラスチック使用義務化に向け、自動車由来の再生材(PIR含む)だけでは量が不足することが確実視されている。

・原料区分「PIR」と「PCR」: PIRは高品質だが供給量が限られ価格が上がりやすく、PCRは供給量と価格に優位性がある一方、品質面に課題が残る傾向にある。

・PCR由来の再生材「CirculeX」: 供給量と価格に優位性を持つ一方、物性や臭気に課題のあるPCRを高機能化し、バージンプラスチックと同等以上の強度を実現。自動車部品への展開を可能にする高機能再生材。 

 

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ELV規則の発効と再生材不足

EUのELV規則が発効されました。2026年7月24日に「車両設計の循環性要件および使用済み自動車の管理に関する規則」としてEU官報に掲載され、同年8月13日に発効しました。規則全体の原則的な適用開始は2028年9月1日です。新たに型式認証される乗用車・小型商用車については、2032年9月以降、車両に使用するプラスチックの15%以上、2036年9月以降は25%以上を、使用後に回収された廃プラスチック由来の再生材とすることが求められます。[1]

これまで、ELV規則の内容や適用時期が確定していないことを理由に、再生材の本格的な評価を見送っていた企業も少なくありませんでした。しかし、規則番号、発効日、適用時期、再生材含有率が正式に確定したことで、欧州市場向け車両に関わる自動車メーカーや部品メーカーには、量産採用を見据えた材料評価を具体化することが求められます。

もっとも、ELV規則が定める再生材含有率のすべてを、使用済み自動車から回収したプラスチックだけで賄う必要はありません。規則上、再生プラスチックの目標量のうち20%以上は、使用済み自動車または車両の使用段階で取り外された部品に由来する材料で満たす必要があります。一方、残る部分には、容器包装、家電、物流資材など、他産業から回収されたポストコンシューマー由来の再生プラスチックを利用できます。[1]

これは、単に多様な再生材の利用を認めるための措置ではありません。自動車由来の再生材だけでは、今後必要となる量を確保できないという供給上の制約が背景にあります。

欧州では、自動車向け再生プラスチックの供給不足が懸念されており、欧州委員会のELV規則案に関する影響評価によると、再生プラスチック含有率を30%とするシナリオで、2035年の需要がベースライン比で年間87万2,000トン増加すると試算され、需給不均衡のリスクが指摘されています。[2]

国内に話を移すと、日本自動車工業会の参考試算では、国内自動車産業におけるサステナブルプラスチックの必要量は、2035年に13万6,000トン、2040年に32万8,000トン、2045年に38万8,000トンへ増加します。これに対し、自動車業界内で回収可能な最大量は、2035年に5万8,759トン、2040年に7万7,190トン、2045年でも9万1,880トンにとどまります。

その結果、不足量は2035年に7万7,241トン、2040年に25万810トン、2045年には29万6,120トンに達します。2045年には、必要量が自動車業界内で回収可能な量の約4倍となる計算です。[3]

したがって、ELV規則への対応を自動車由来の再生材の確保だけで進めることは、供給面で課題が生じる可能性が高いです。今後は、他産業から排出される使用済みプラスチックを、自動車部品に適用可能な品質へ転換し、安定的に供給する体制を構築することが不可欠となります。

しかし、再生材をひとくくりにすることはできません。各再生材の原料の由来とそれに紐づく物性、供給量、価格、品質管理の違いを踏まえて、用途に最適な再生材を選定する必要があります。

 

再生プラスチックの供給・価格・品質を左右するPIRとPCR

再生プラスチックは、原料が発生した段階によって大別すると、製品の製造工程で発生した材料を再生するPIRと、製品として使用された後に回収された材料を再生するPCRに分けられます。

PIRは、Post-Industrial Recycled materialの略称であり、製品の製造・成形工程で発生した端材、成形不良品、余剰材料などを回収し、再原料化した材料です。

原料となる樹脂の種類や添加剤、発生工程を把握しやすく、異物、汚れ、臭気の混入も比較的少ないため、バージン材に近い安定した品質を確保しやすいという特徴があります。そのため、自動車、家電、日用品など、一定水準以上の物性や品質安定性が求められる用途では、これまでPIRが優先的に使用されてきました。

一方、PIRの供給量は、製造工程から発生する端材や不良品の量に依存します。再生材需要が増加しても、原料となる良質な工程端材を同じ割合で増やすことはできません。むしろ、製造工程の歩留まりが改善すれば、PIRの原料となる端材の発生量は減少します。

この構造的な制約により、高品質なPIRは需要が逼迫し、調達難易度が高まっています。一つの供給元から確保できる数量も限られるため、必要量によっては複数の材料メーカーやリサイクラーから調達しなければならず、材料の仕様や品質管理を統一する負担も生じます。

需要の増加に対して供給を拡大しにくい結果、高品質なPIRは調達価格も上昇しやすくなります。「再生材はバージン材より高い」という認識が形成される背景には、品質が安定している一方で供給量が限られるPIRの価格が、再生材全体の価格として捉えられていることがあります。

これに対しPCRは、Post-Consumer Recycled materialの略称であり、消費者や事業者が製品として使用した後に回収されたプラスチックを再生した材料です。

PCRには、使用済み自動車由来、家電由来、物流資材由来、容器包装由来など、複数の回収元があります。同じPPのPCRであっても、どの製品から回収されたかによって、原料の構成、異物、色、臭気、添加剤、物性、供給量は異なります。

なかでも、家庭から排出される容器包装プラスチックは、自治体の分別回収制度を通じて、日常的かつ広範に回収されます。一般社団法人プラスチック循環利用協会の2024年資料では、一般系廃棄物395万トンのうち「包装・容器等/コンテナ類」が73%(286万トン)を占めており[4]、他の廃プラスチックと比べて突出して量が多いとされています。製造工程で発生する端材に依存するPIRと比べて、原料となる使用済みプラスチックの母集団が大きいため、再生材需要の増加に応じて供給量を拡大できる余地があります。

また、高品質PIRのように限られた工程端材を複数の企業が奪い合う構造ではないため、容器包装由来PCRはPIRより原料価格を抑えやすく、最終的な再生材についても価格競争力を確保しやすいという特徴があります。

自動車部品では、試作に必要な少量の材料を確保できるだけでは採用に至りません。量産移行後に、同一仕様の材料を月単位、年単位で継続供給できることが必要です。回収母集団の大きい容器包装由来PCRは、供給量と価格の両面から、自動車由来材やPIRだけでは満たせない需要を補う有力な原料となります。

容器包装由来PCRの供給力が、自動車用途に直結しなかった理由

容器包装由来PCRには、原料量と価格の優位性がある一方、自動車用途への採用を阻んできた品質上の課題があります。

家庭から回収される容器包装プラスチックには、PPだけでなく、ポリエチレンなどの異種樹脂、ラベル、印刷、接着剤、食品や洗剤の残留物などが混在しています。選別や洗浄を行った後も、回収物の構成によって、樹脂組成や異物量、色調が変動する可能性があります。

また、製品として一度使用されたうえで、粉砕、溶融、再ペレット化などの工程を経るため、バージンPPや高品質PIRと比較して熱履歴が多くなります。その結果、曲げ特性、引張特性、耐衝撃性などが低下しやすく、物性のばらつきも発生しやすくなります。

食品残渣や洗剤などに起因する臭気も、容器包装由来PCRの代表的な課題です。特に自動車内装や家電、家具などでは、成形時の臭気だけでなく、製品が高温環境に置かれた際の臭気が採用可否に影響します。

こうした理由から、従来の容器包装由来PCRは、パレット、擬木など、外観、臭気、物性への要求が比較的限定される用途に使用が偏ってきました。

すなわち、容器包装由来PCRは、PIRよりも原料量が多く、供給を拡大しやすく、価格を抑えやすい一方、そのままでは自動車部品に必要な品質を満たしにくい材料です。

今後の再生材不足を解消するためには、供給量の限られた高品質PIRを確保するだけでは足りません。容器包装由来PCRが持つ供給力と価格競争力を維持しながら、強度、臭気、品質安定性を、自動車を含む産業用途で評価可能な水準へ高めることが必要です。

容器包装由来PCRを高機能化した「CirculeX」

この課題に対してTBMが開発したのが、高機能再生材「CirculeX(サーキュレックス)」です。

CirculeXは、家庭から排出される使用済み容器包装プラスチック由来のPCRを原料としていながら、TBMが素材開発で培った独自の配合・混練技術と、横須賀サーキュラー工場における選別、粉砕、洗浄、再ペレット化のプロセスを組み合わせ、一般的な容器包装由来PCRで課題となる物性低下と臭気の課題の改善に成功した革新的な再生材です。

CirculeXの位置付けは、単に容器包装プラスチックを再ペレット化した材料ではありません。

容器包装由来PCRが持つ「原料量が多い」「供給を拡大しやすい」「PIRより価格を抑えやすい」という利点を基盤としながら、配合設計と製造工程の最適化によって、従来のPCRでは適用が難しかった高要求用途への展開を可能にする材料です。

高品質PIRは、物性面では使用しやすい一方、供給量に制約があり、高い需要に伴って価格も上昇しやすいです。これに対しCirculeXは、自治体を通じて継続的に回収される容器包装プラスチックを原料とするため、PIRよりも広い原料基盤を有しています。TBMは、横須賀サーキュラー工場において、使用済み容器包装プラスチックの受け入れから、光学選別、粉砕、洗浄、再ペレット化、品質確認までを一貫して行っています。

実際に供給可能な数量は、要求物性、グレード、品質保証条件によって異なりますが、工程端材の発生量に左右されるPIRとは異なり、継続的に回収される容器包装プラスチックを基盤として、量産規模での供給を検討できる点がCirculeXの特徴です。

価格面についても、原料価格を抑えやすい容器包装由来PCRを使用し、再生工程と高機能化を一体的に管理することで、高品質PIRやバージンPPに対する価格競争力を備えています。

再生材の導入に伴って材料費が上昇するのではなく、必要量を確保しながら価格を抑えた再生PPへの切り替えを検討できることは、多量のPPを継続的に使用する自動車部品において重要な価値となります。

供給量と価格を確保しながら、従来PCRの物性を引き上げる

容器包装由来PCRの供給力と価格競争力を自動車用途へつなげるためには、従来のPCRが抱えていた強度不足の課題に対応する必要があります。

CirculeXは、独自の配合・混練技術によって、容器包装由来PCRの物性を高めています。

自社試験では、対象グレードの曲げ強度について、従来の容器包装由来PCRを約126%、比較対象としたバージンプラスチックを約47%上回る結果を確認しました。シャルピー衝撃強度についても、従来の容器包装由来PCRを約76%、比較対象としたバージンプラスチックを約29%上回っています。[5]

一般的な容器包装由来PCRは、価格と供給量に利点がある一方、物性面ではバージン材や高品質PIRより劣るという認識がありました。CirculeXは、再生による強度低下を補うだけでなく、配合設計によって比較対象としたバージンプラスチックを上回る水準まで物性を高めています。

これにより、従来の容器包装由来PCRでは適用が難しかった自動車部品や家電など、耐久性が求められる用途への展開を進めています。

臭気についても、洗浄プロセスの改善により、従来の容器包装由来PCRと比較して約40%低減しました。CirculeXでは、高強度と低臭気を両立するグレード、高強度を重視するグレード、低臭気を重視するグレードを設定し、対象用途に応じて強度や流動性を調整しています。[5]

*強度および臭気の数値は、自社試験による代表値であり、保証値ではありません。曲げ強度はJIS K 7171、シャルピー衝撃強度はJIS K 7111に準拠した試験で評価しています。臭気は、80℃で1時間加熱した成形品を熱線型半導体式センサーで測定しています。

自動車部品への適用を見据えたグレード開発

自動車に使用される樹脂のうち、PPは重量比で約44%を占め、最も使用量の多い樹脂です。日本自動車工業会は、再生PPの活用促進に向け、汎用PPと複合強化PPについて、想定部品ごとの目標物性を公表しています。[6]

汎用PPでは、インパネアンダーカバーなどの一般部品向けの汎用PP①と、ドアトリムなど衝撃要求のある部品向けの汎用PP②が設定されています。

複合強化PPでは、バンパーなど高剛性・高衝撃性が求められる部品向けの複合強化PP①、インパネなど高剛性と衝撃性が求められる部品向けの複合強化PP②、アンダーカバーなど高い衝撃性能が求められる部品向けの複合強化PP③が示されています。

既に開発しているCirculeXの強度アップ処方では、曲げ強度、引張強度、シャルピー衝撃強度などを用途に応じて調整できます。フィラーを用いるグレードについては、既存の成形設備への適合性も含めて確認し、対象部品、成形方法、現行材料の仕様、年間使用量に応じた提案を行います。

再生材の採用に不可欠な化学物質管理

再生材を自動車用途へ展開するうえでは、物性、供給量、価格に加えて、含有化学物質を管理できることが必要です。

PCRは、さまざまな製品として使用されたプラスチックを原料とするため、意図的に配合した添加剤だけでなく、回収原料に由来する規制対象物質の混入リスクも考慮しなければなりません。

自動車業界では、IMDSを通じて、部品や材料に含まれる物質情報をサプライチェーン内で管理しています。IMDSは自動車産業向けの材料データシステムであり、GADSLなどに基づく申告対象物質の確認にも用いられます。[7]

TBMは2026年4月、独立系の分析専門企業である株式会社クリアライズと、PCR再生材における規制化学物質の管理および品質保証スキームの共同開発に関する基本合意を締結しました。

プレスリリース:TBM、分析専門企業クリアライズとPCR再生材における化学物質管理および品質保証スキームの共同開発に関する基本合意を締結

TBMが有する再生材の製造ノウハウと、クリアライズが保有する質量分析などの分析技術を組み合わせ、PCR特有の化学物質リスクを可視化するとともに、分析項目と合格基準を明確にした評価規格の構築を進めています。これにより、PCRの採用において課題となる化学物質管理の不透明性に対し、分析と品質保証の仕組みから対応する取り組みです。

再生材を量産部品に採用するためには、物性値を提示するだけでなく、原料に含まれる化学物質を継続的に確認し、顧客が必要とする材料情報を提出できる体制が必要となります。TBMは、CirculeXの高機能化と並行して、その品質保証基盤の構築を進めています。

容器包装由来PCRを、自動車用再生PPの供給源へ

ELV規則の成立により、対象となる新型車では、再生プラスチックの使用が設計・材料選定上の要件となります 

一方、高品質PIRは、物性や品質が安定している反面、供給量に限界があり、需要の拡大に伴って価格も上昇しています。使用済み自動車から回収できるプラスチックだけでも、将来必要となる再生材の量を確保することは難しいです。

この需給ギャップを埋めるうえで重要となるのが、回収量が多く、原料価格を抑えやすい容器包装由来PCRです。ただし、その供給力を自動車用途へつなげるためには、従来課題となっていた強度、臭気、品質安定性、化学物質管理を解決しなければなりません。

CirculeXは、容器包装由来PCRが持つ供給量と価格の利点を生かしながら、独自の配合・混練技術とリサイクル工程によって物性と臭気を改善した高機能再生材です。

TBMでは、対象部品、現行材料、要求物性、成形条件、年間使用量を確認したうえで、物性データの提供、グレードの提案、サンプルによる試作・評価に対応しています。

供給量の限られる自動車由来の再生材の確保だけではELV規則への対応が不十分になりかねない現状です。こうした状況では、容器包装由来PCRをはじめとする自動車由来以外の再生材について、その特性やメリット、デメリットを十分に理解した上で、規則の適用開始に先立って採用可能性を検証していくことが、将来的なELV規則への対応と再生材の供給不足に備える上で、有効な対応策の一つとなります。 

CirculeXについて:https://tb-m.com/business/circulex/

お問い合わせはこちら:https://tb-m.com/contact/

 

出典

[1]欧州議会・EU理事会「Regulation(EU)2026/1738」。2026年7月24日EU官報掲載。第6条に再生プラスチック含有率、第59条に発効日および適用開始時期を規定。

[2]欧州委員会「Impact Assessment Report accompanying the proposal for a Regulation on circularity requirements for vehicle design and on management of end-of-life vehicles」(SWD(2023) 256 final) 

[3]日本自動車工業会「再生材活用促進に向けた自工会の取組みについて」。再生材の必要量、自動車業界内の供給可能量および不足量の試算。

[4]一般社団法人 プラスチック循環利用協会 2025 「2024年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」

[5]TBM「高機能再生材CirculeX」プレスリリース。

[6]日本自動車工業会「再生材プラスチックの活用促進に向けた自工会の取組みについて―汎用PP、複合強化PPの目標値公表―」。汎用PP①・②、複合強化PP①・②・③の用途例および目標物性。

[7]IMDS公式サイト。IMDSおよびGADSLの位置付け。


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