
物価高時代に考える、「使用済みプラスチック」を国内資源へ
原材料価格の高騰、円安、物流コストの上昇――。いま、日本のものづくりは「必要な資源を安定した量と価格で確保する」という根幹において、大きな課題に直面しています。資源の多くを海外に依存する日本にとって、価格変動や国際情勢がそのまま深刻な調達リスクに繋がっています。
こうした状況だからこそ、いま目を向けるべきなのが、国内で循環できる資源です。
私たちの身の回りにある食品トレーや洗剤ボトルなどの「容器包装プラスチック」は、これまで単なる廃棄物と見過ごされがちでした。しかし見方を変えれば、国内に安定して存在する新たな資源でもあります。
こうした使用済みプラスチックを価値ある資源へと再生し、海外資源への依存や調達リスクを手元にある資産で低減する。この再生材を活用する取り組みは、単なる環境配慮のみならず、原材料価格の高騰や製造業が直面する国際的な法規制への対応策の一つとなり得ます。
欧州「ELV規則」が加速させる、再生プラスチックへの需要と課題

実際に、再生材の活用を促す法規制は世界各国・地域で整備が進んでいます。その一例が、EUで正式採択された、自動車の循環設計と使用済み自動車の管理に関する新規則(以下、ELV規則)です。
※ELV:End-of-Life Vehicle(使用済み自動車)
この新規則は発効2年後から適用され、発効後6年で新車製造に使用するプラスチックの少なくとも15%、10年で25%を再生プラスチックとすることが義務付けられます。また、その再生プラスチックの少なくとも20%は使用済み自動車由来とすることが求められます。
欧州市場をターゲットにする自動車メーカーや部品メーカーにとっては、「リサイクル素材を安定して手に入れられるか」が、これからのビジネスを左右する状況になっていきます。
ここで重要なのは、新規則が求めるのが、製造工程で発生する端材ではなく、製品の使用後に回収されたプラスチックを原料とする再生材である点です。
加えて従来、自動車部品などで再生材として活用されてきた工場端材などのPIR材※は、需要の拡大に対して供給が限られ、価格高騰と調達難が生じています。
※PIR材:生産・流通工程などで発生する産業廃棄物由来の再生材
そこで注目されるのが、家庭から排出される使用済みプラスチックを原料とするPCR再生材※です。家庭由来の資源を活用できることから、PIRに比べて調達先の拡大が期待されています。
※ PCR(Post-Consumer Recycled):プラスチック製品など、消費者が製品を使用した後に回収されるリサイクル材
ただ、従来の使用済みプラスチック由来のPCR再生材には、食品残渣などに起因する臭気や、原料品質のばらつきに伴う物性低下といった課題があり、自動車部品を含む用途への採用が限定されていました。


供給源を広げられるPCRを高機能な再生材へ。CirculeXの独自技術
こうした課題への対応として、TBMは2026年2月に高機能再生材「CirculeX(サーキュレクス)」の開発を発表しました。
「CirculeX」は、使用済みプラスチックを原料に、TBMが素材開発で培った独自の配合・混練技術を活用して開発した高機能再生材です。
従来のPCR再生材において大きな障壁となっていた物性低下や臭気の課題に対応し、曲げ強度およびシャルピー衝撃強度において、従来のPCR再生材に加え、バージンプラスチックを上回る強度※を実現しています。
※算出方法:JIS K 7171(曲げ強度)およびJIS K 7111(シャルピー衝撃強度)に準拠した試験でのPP(ポリプロピレン)との比較評価結果(自社調べ)。物性値は代表値であり、保証値ではありません。対象グレード:「高強度+低臭気グレード」「高強度グレード」
さらに、顧客のニーズに応じて「高強度+低臭気グレード」など柔軟なグレード提案が可能です。そのため、これまで臭気や強度不足を理由に再生材の採用が見送られてきた家具、家電部品、自動車内装材など、屋内外の多様な製品用途への展開が見込まれます。
重要なのは、この技術によって価格が高騰するPIRだけに依存せず、国内で回収されるPCRを高付加価値材料として活用できることです。技術面の課題に対応し、経済合理性の確保につなげることは、再生材を持続的に活用していく上で重要な要素です。
現在、実際の用途開発を進める中で、高機能PCR再生材は、環境価値だけでなく、品質や耐久性といった性能面が評価される用途にも採用が広がる可能性が見え始めています。
例えば、外から見えにくい構造部材や、PPが使用される機能部材など、自動車に限らずさまざまなものづくりの現場への展開が期待されます。
国内循環で目指す、持続可能なサプライチェーンの構築

2026年7月現在、TBMは神奈川県横須賀市にある「横須賀サーキュラー工場」で、CirculeXの量産に向けた体制準備を進めています。
その先にTBMが目指しているのは、廃棄物の発生地域で回収・再生・製品化までを循環させる「地域循環型」の資源循環モデルです。このモデルは、原料の広域輸送を抑えることで、製品の調達から製造、廃棄までの環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点からも、輸送に伴う環境負荷の低減につながる仕組みです。
こうした資源循環モデルによって、CirculeXはバージンプラスチックと比較して、1kgあたり最大6.43kg(最大61%相当)のCO₂排出量削減が見込めます。
※算出方法:原料調達から製造、焼却処分までのライフサイクル全体で算定。バージンプラスチック100%使用時と比較し、横須賀サーキュラー工場の製造工程での実質再エネ100%利用を前提。
このように、再生材利用は単なる環境配慮ではありません。国内資源を活用したサプライチェーンの構築は、原料調達先の多様化や日本のものづくりの競争力向上に向けた選択肢の一つとなり得ます。
「資源は海外から調達するもの」というこれまでの常識を変え、身近な「捨てる」を次の産業資源へとつなぐ。その可能性は、自動車だけでなく、さまざまなものづくりの現場に広がっています。
こうした高機能再生材「CirculeX」の取り組みの詳細は、当社の公式ページでご紹介しています。
「自社製品にも活用できるのではないか」「このような用途でも可能性があるのではないか」と感じられた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
▼高機能再生材「CirculeX」ページはこちら
▼TBMのコーポレートサイトはこちら

