CO₂はどこから出ている?日本の排出源をたどると見える「資源化」の可能性

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部屋の照明をつける。電車に乗る。建物や自動車、日用品を使う。私たちの暮らしは、さまざまな形でCO₂の排出とつながっています。

しかし、CO₂が実際に発生している場所を目にする機会は、ほとんどありません。家庭やオフィスで使う電気も、その多くは離れた場所にある発電所でつくられています。鉄や素材の製造に伴うCO₂も、製鉄所や工場で発生します。

いま、こうした発電所や工場で発生するCO₂を回収し、建築資材などの原料として活用する取り組みが、実際の製品として社会に出始めています。

CO₂の排出源をたどると、これまで「排出の現場」として見られてきた場所を、「資源供給の起点」として捉え直す可能性が見えてきます。

電気や製品の「手前」でCO₂を排出する発電所と工場

私たちが電気や製品を使う場所と、CO₂が実際に発生する場所は、必ずしも同じではありません。

環境省によると、2024年度の日本のCO₂排出量は、約9億7,100万トンでした。

家庭やオフィスで電気を使えば、その活動はCO₂排出とつながりますが、化石燃料を使って発電した際のCO₂が実際に出るのは、電気を利用する建物ではなく火力発電所です。

建物や自動車、家電に使われる鉄や樹脂も同様です。完成した製品を使う場所とは離れた製鉄所や素材工場で、製造工程に伴うCO₂が発生しています。

私たちの身の回りにある商品やサービスの上流には、エネルギーや素材を生み出す拠点があります。CO₂の排出源を考えるときは、日常の行動だけでなく、その背景にある発電所や工場まで視点を広げる必要があります。

上位100事業所で約26%。排出の集中が回収の起点になる

日本のCO₂排出は、一部の大規模な発電所や工場に集中しています。

日本では、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に対して排出量の算定と国への報告が求められています。2023年度には、1万4,974の事業所から合計5億6,058万トンの温室効果ガス排出量が報告されました。これは日本全体のCO₂排出量ではなく、制度の報告対象となる事業所を集計した数字です。

TBMが環境省の公表データなどを基に算出したところ、報告対象となる大規模事業所のうち、排出量上位1%の事業所だけで報告排出量全体の約半分を占めています。さらに、排出量上位100事業所だけで、日本全体のCO₂排出量の約26%に相当します。その多くは、火力発電所や製鉄所などです。

この集中は、課題の大きさを示すだけではありません。

小規模な排出源から少量ずつ出るCO₂を集めるには、多数の回収地点や輸送手段が必要です。一方、大規模事業所では、特定の場所からまとまった量のCO₂が継続的に発生します。排出地点と量が把握できれば、回収設備をどこに設置し、回収したCO₂を何に変え、どこで使うのかを具体的に検討しやすくなります。

もちろん、CO₂を利用すれば気候変動の問題が解決するわけではありません。省エネルギーや再生可能エネルギーへの転換、製造工程の改善などによって、まず排出そのものを減らすことが重要です。

そのうえで、すぐには排出をなくすことが難しい分野では、残るCO₂を回収して利用することも選択肢の一つになります。

CO₂が大量に出る場所は、見方を変えれば、炭素資源がまとまって存在する場所でもあります。

CO₂を固体の原料へ。カーボンリサイクルの仕組み

回収したCO₂を資源として利用する取り組みは、CCU(Carbon Capture and Utilization:CO₂の回収・利用)と呼ばれます。

TBMは、火力発電所や製鉄所などで発生するCO₂と、工場の副産物に含まれるカルシウムを化学反応させ、炭酸カルシウムを生成するカーボンリサイクル事業を進めています。

気体だったCO₂を固体の鉱物へ取り込むこの方法は、炭素鉱物化と呼ばれます。生成されたCCU炭酸カルシウムは、建築資材や樹脂製品などの原料として活用できます。

重要なのは、CO₂を「回収できる」だけではなく、「産業が使える原料へ変えられる」ことです。

その実用例の一つが、カーボンリサイクルSPC床材です。

TBMは、CO₂を固定したCCU炭酸カルシウムを原料に活用し、床材として求められる性能や施工性を備えた建築資材として商用化しています。

CO₂を資源として活用する取り組みは、研究段階にとどまらず、実際に市場で使われる建材へとつながっています。2026年には、東京都主催の「SusHi Tech Tokyo 2026」のステージ床材として採用されました。

CO₂を地域で資源化する「地産地生」

CCU炭酸カルシウムを原料に使用した床材の商用化は、CO₂を原料として建材に活用できることを示す一例です。CO₂を継続的に資源として活用していくには、製品化に加えて、回収から原料化、供給までをつなぐ仕組みが必要です。

大規模排出源にCO₂がまとまって存在するという特徴を生かすには、排出源の近くで回収・原料化し、周辺の製造業へ供給する流れをつくることが重要です。

回収したCO₂を遠くまで運べば、輸送設備やエネルギーも必要になります。

そこでTBMが構築を進めているのが、CO₂排出源の隣接地にCCUプラントを設け、CO₂の回収から原料化、供給までを近い範囲でつなぐ「地産地生」のモデルです。

CO₂の長距離輸送や中間工程を抑えながら、地域の中に新しい原料の流れをつくることを目指しています。

CCU炭酸カルシウムを原料に用いた床材は商用化され、実際の空間への採用も始まっています。一方、各地の排出源にCCUプラントを展開する仕組みは、現在、検証を進めている段階です。

すべての排出拠点がそのまま資源供給拠点になるわけではありません。CO₂の量や性質、カルシウム源、地域の需要や輸送負荷などを踏まえ、拠点ごとに成立条件を見極める必要があります。

排出拠点を、新しい原料供給拠点へ

これまで、発電所や工場はCO₂を「排出する場所」として見られてきました。

しかし、排出地点にまとまって存在するCO₂を回収し、固体の原料へ変え、その地域のものづくりへ戻すことができれば、見え方は変わります。

電気や鉄をつくる過程で発生したCO₂が、炭酸カルシウムという原料に変わり、建築資材として使われる。排出源をたどることは、これまで見過ごされてきた「資源の入口」を見つけることでもあります。

CO₂の排出削減を進めながら、削減が難しい排出を、次のものづくりに使える資源へ変える。

大規模な排出拠点が、将来の新しい原料供給拠点になっていく可能性があります。TBMは、CO₂の回収から原料化、製品化、そして地域での供給までをつなぎ、カーボンリサイクルの社会実装を進めていきます。

参考・出典:
環境省「2024年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について」
環境省・経済産業省「地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における令和5年度温室効果ガス排出量の集計結果の公表について」2025年11月20日公表
経済産業省「カーボンリサイクルロードマップ」

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