今回の記事では、2024年3月14日にTBM本社7階で行われたイベント「ユニコーン企業のサステナビリティ専任者たちが語るインパクトスタートアップの『今』」をご紹介します。
今回のイベントは、インパクト投資やサステナビリティ/インパクトコンサルティングのトップランナーであるGLIN Impact Capital様から、日本のインパクトスタートアップの仲間を一緒に増やしたいとのご提案を頂き、共催しました。当日は、金融機関や投資会社のサステナビリティファイナンスご担当者、事業会社のサステナビリティご担当者など、約15名の方が参加されました。
#1. インパクトスタートアップとは?
インパクトスタートアップとは、社会的・環境的課題の解決や新たなビジョンの実現と、持続的な経済成長を共に目指す企業のことで、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の考え方を体現する存在として近年注目されています。昨年秋には、経済産業省がインパクトスタートアップの支援プログラム「J-Startup Impact」を設け、世界に通用する技術・サービスを持ち、持続的な成長を期待できる30社を選定し、TBMもそのうちの1社として選ばれました。
#2. 対談1 「ユニコーン企業のサステナビリティ専任者たちが語る、事業成長とインパクト/ESGの重ね方」
最初の対談では、GLINからはコンサルティングディレクターで以前Spiber社でサステナビリティ領域をリードしていた青木様、TBMからは執行役員CSuOの羽鳥が登壇。スタートアップ企業のサステナビリティ専任者として今まで取り組んできたことや、現在のサステナビリティの取り組みについて話がありました。
まず、サステナビリティ専任者としてのミッションについて話がありました。
“Spiberでは「サステナビリティとビジネスの統合」と「日本企業がチャレンジをしないレベルの本質的なサステナビリティの取り組みを実践していく」ことを念頭に取り組みを進めた(青木様)”
“TBMにジョインして、まず初めに自社プロダクトの価値の根源である環境負荷や貢献度の定量化に取り組んだ。いまでは、プロダクトだけでなく、コーポレートとしてのサステナビリティ推進体制の確立を目指している(羽鳥)”
また、サステナビリティ担当者として直面した挑戦については、両名から「時間軸」と「目線」が言及されました。
“スタートアップとして、利益創出の蓋然性を示し、実際に利益と規模拡大も追求しなければならない中で、中長期的な目線を持った経営を実施することを社内外のステークホルダーと擦り合わせていくことはやはり大きな挑戦(青木様)”
“ユニコーン企業の事業は国内で完結することは少ない。グローバルな課題解決と市場を目指していくことで、顧客や社員をはじめとするステークホルダーから高い目線での要求がある(羽鳥)”
ユニコーン企業のサステナビリティ担当者ならではの視点を共有頂きました。
#3. 対談2 「インパクトIPOを目指して」
ここからは、GLIN代表パートナーの秦様に加わっていただき、投資家の視点からみるインパクトスタートアップとインパクトIPOについてお話を伺いました。現状、インパクトIPOに決まった定義はありませんが、社会的課題の解決を念頭に置いて事業を行う企業の新規上場を指して使われることが多い言葉です。
“政府からの大きな期待を感じる。人口減少や少子高齢化などによって国全体のリソースが縮小する中、政府ではカバーしきれない課題をインパクトスタートアップに解決してもらいたい、ということだと理解している(羽鳥)”
“インパクトスタートアップには「課題の構造」「課題解決による受益者」「課題解決後の理想の社会像」「事業が課題解決にどう貢献するか」を意識しながら自社のインパクトを整理頂けると、インパクト投資家にとっても分かり易いと思う(秦様)”
“ヨーロッパでは「ウォッシュ」に対する見識が深く、より精緻なサステナビリティ情報開示とインパクト(ネガティブ・ポジティブ共に)の示し方を求められる。自社ステークホルダーが誰であり、何を求めているかを把握することが重要(青木様)”
“「セオリー・オブ・チェンジ *注」などのフレームワークを使って自社事業のインパクトを整理し、事業成長・拡大と社会的インパクトの拡大がリンクしたKPIを設定してモニタリングできるようになることが好ましい(青木様)”
“インパクト投資家が取り組むべきこととして、投資家がインパクトの創出・拡大にどのように貢献したかという「インベスター・コントリビューション」の要素が求められている(秦様)”
“財務指標=インパクトが実現しているビジネスモデルもあれば、財務指標とインパクトが逆行する側面を持つ事業も存在する。投資する側も投資を受ける側も互いの知見を持ち寄って、こうした議論をしていくことが重要(羽鳥)”
最後に登壇者の方から、メッセージを頂きました。
“特にスケールアップを目指している企業は、社会的なインパクトだけではなくESGの観点との両立が重要(青木様)”
“インパクトの測定や管理手法はまだ発展途上で唯一の正解がある領域ではないが、事業成長とインパクト創出の両立を目指すためには重要なことなので、是非やれることから始めて頂ければと思う(秦様)”
“サステナビリティやインパクトの知見を共有しながら、スタートアップ全体として社会変革に向けて一緒に取り組んでいきたい(羽鳥)”
事業会社だけでなく、インパクト投資家の視点から多くの気づきが得られたセッションでした。
*注 「セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change)」 事業がどのように社会の変革に役立つのかについて、課題の構造や原因と、解決するための変化の理論を可視化したもの。事業計画や評価などに用いられる。
#4. 最後に
対談後は簡単なフィンガーフードを囲んで参加者のみなさんと懇親会を開催しました。サステナビリティやインパクトスタートアップについて、みなさまが予定終了時刻を過ぎても熱心に話し込まれている様子が印象的でした。
「インパクトスタートアップの知見を広め、仲間を増やしたい!」という想いから始まった今回のイベントですが、参加者の方々からは
“投資家サイドと事業会社サイドの双方から話を聞けて参考になった”
“事業の本質を追求してこその価値創造とインパクト創造であることを改めて認識した”
“各社のリアルな取り組みや経験が大変参考になった”
などの感想が寄せられ、皆様の懇親会での熱く語りあう姿を見て、当初の想いは達成できたのではと感じました。
インパクトスタートアップはまだまだ未踏の領域だらけです。TBMは事業を通して社会的課題の解決を目指しながら、他のスタートアップ企業のみなさんとも知見を共有し、インパクトスタートアップの裾野を広げ、共にレベルアップしていきたいと考えています。一緒に世界の未来を変えていく仲間を増やし、取り組みを広げていきたいと思います!