「2025年の崖」に立ち向かう。ものづくりベンチャーにおける、DX推進委員会の使命

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梁田 将史|コーポレート部 情報システムチーム マネージャー 兼 DX推進委員会 委員長(※2024年8月時点)
大学卒業後、プリンター販社の技術部門で新製品立ち上げや医療系大型案件を担当。その後、建築業界で職人兼IT/事務全般を担当し、新規事業所の立ち上げに従事。前職では美容系メディアでオンライン事業の立ち上げや、Salesforceを使った営業マネジメント支援と業務プロセス改善を担当。2022年にTBMに入社し、DX推進を担当。2023年にはSansanとSalesforceを中心に業務基盤構築を進め、2024年にはDX推進委員会を立ち上げ、全体的なDX活動を主導している。

神山 なつみ|広報・マーケティング部 エキスパート 兼 DX推進委員会(※2024年8月時点)
大学卒業後、新卒でGMS(総合スーパー)に入社し、衣料品のバイヤー、MD、ディストリビューターを担当。その後、Eコマース運用・コンサル会社で中小~大企業のECビジネス支援に従事。2021年にTBM入社後、新規事業のECサイト立ち上げに携わり、2022年からはLIMEX拡販のためマーケティングコミュニケーションを担当。Salesforce導入・運用を進め、データをマーケティングに活かしながら、DX推進委員会としても活動を行う。

服部 祐介|経営管理部 MI推進チーム マネージャー 兼 アプリケーションエンジアリング部 Functional Sheeting マネージャー 兼 DX推進委員会(※2024年8月時点)
大学ではシリコーン系モノマー合成とポリマー重合を研究。新卒で積水ポリマテックに入社し、シリコーンゴム部品の開発・設計を担当。前職の三井化学では、合成ゴム(EPDM)の研究開発を行う。2021年にTBM入社後は、テクノロジーセンターでポリマー解析やゴム配合設計の知見を活かしたLIMEXコンパウンドの研究開発に従事。2023年より、経営管理部MI推進チームにて、データプラットフォームの構築やデータ収集の効率化、Pythonを用いたデータ分析、自然言語処理などを活用して、材料開発のDX化を推進している。

目次

#1. 最新テクノロジーを活用し、サステナビリティ革命の実現へ

ー初めに、DX推進委員会の立ち上げの背景から教えてください。

梁田:立ち上げは2023年12月の年末でした。その前から情報システムチームの業務の中で、IoT・AIなどを中心とした第4次産業革命の流れを強く感じており、TBMはサステナビリティ領域のトッププレイヤーとして、サステナビリティ革命を起こす為には、自らが主体的にITやデータの活用・業務プロセス改善を推進すべきだと考えていました。

しかし、当初は従業員が増加し組織体制も変化していく中、業務プロセスや業務アプリケーション・システムが孤立し、情報が連携されていない状態、いわゆる「サイロ化」が進み、それが生産性向上とデータ活用の上での大きな足かせになっていました。

また、当初はDX推進に関する全社方針・戦略・計画は確立されていませんでした。経済産業省が2018年に「DXレポート」の中で使用した「2025年の崖」(DX化が進まなければ大きな経済損失が発生する)という言葉がありますが、これが現実のものになるのではないかと危惧しました。このような課題意識から、会社全体のDX推進の必要性を感じ、DX推進委員会を立ち上げました。

コーポレート部 情報システムチーム 梁田

ー昨年度に正式に設立されたのですね。それでは、DX推進委員会の活動目的を教えてください。

神山:目的は3つあります。1つ目は、全社最適でのDX戦略・企画の立案です。社内でデジタルの仕組みが統一されていない状況は、業務と組織の分断を招くため、全社横断で取り組む必要性が高いと感じています。

しかし、DX化を進めるための人材が各部門にいるわけではないので、2つ目の目的として、DX人材の育成・登用を掲げています。

そして3つ目はカルチャーの醸成です。この「カルチャー」という言葉には、業務効率とコスト削減の意識向上、さらに生成AIなど最新テクノロジーを積極的に取り入れ、新しい挑戦を推進していく姿勢を含めています。

現在のTBMの組織では、CIOやCTOは存在しないため、DX推進委員会がそれに代わる機能となることを目指しています。

#2. ”チームで売る”仕組み作りと、海外での1か月間のMI研修

ーこれまでにどのような活動事例がありますか?

梁田:大きく2つの事例があります。1つ目は、営業改革のためのツールの導入です。営業活動に関する膨大な情報が、複数のスプレッドシートで管理されていたことに対して、非効率性やデータ活用が進んでいないことに課題を感じていました。経営陣も同様の問題意識を持っていましたが、具体的な改善施策がなかなか進んでいませんでした。

ツール導入のきっかけとなったのは、2022年11月に実施されたLIMEX事業本部の組織改編です。それまでの個人商店型の営業モデルから、営業プロセスを複数のステージに分割して適切なチームを配置する「THE MODEL型」に転換しました。

神山:以前はメンバー個人の営業力に依存していた側面がありましたが、営業の型化をすることで、組織全体の営業力を上げていく狙いがありました。

梁田:その組織改編によって、営業活動に関わるメンバーの役割を、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分けることになりました。そうした組織変更に合わせた形で、それぞれが効率的に営業活動を行うために、元々利用していたSansanとの連携も考慮しSalesforceを導入しました。

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服部:もう1つの取り組みは、素材開発におけるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)活用です。2022年から経営管理部でパートナー先などの調査を行った上で、2023年1月から本格的に始動しました。

*MI:統計分析などのインフォマティクスの手法により、材料開発を高効率化する取り組み。これまで多大な時間と費用を要していた材料開発において、統計的な手法を用いて革新的な機能を有する新素材の開発や製造条件の探索を短期化する取り組みとして、世界各国で化学・素材メーカーが成果を上げ始めている。

株式会社TBM - サステナビリティ革...
TBM、素材開発におけるMI活用に向けた取り組みを開始 - 株式会社TBM TBM、素材開発におけるMI活用に向けた取り組みを開始

服部:環境配慮型素材へのニーズが世界中で急速に高まっている中、TBMが掲げる「1年で10年分の成長」、さらには「サステナビリティ革命の実現」には、素材開発のスピードの大幅な向上と高度化が必要です。そのため、先進技術であるMIの実用化への取り組みを通し、開発・製造に関する技術データ基盤を確立させ、ものづくり領域のベンチャー・スタートアップ企業として、グローバルでの事業拡大に向けた競争力を強化していくことが狙いです。

実際に、半年間の期間をかけて、米国のMIベンチャー企業であるパートナーの教育プログラムを受け、そのうちの1ヵ月は、Enthoughtが拠点を構えるアメリカ・オースティンで、プログラミング言語「Python」*の海外研修を実施しました。
Python自体は独学で学ぶ手段もあるのですが、MIで重要な「機械学習×材料」となると、パートナー先との連携が必要でした。

*Python:プログラミング言語(インタプリタ言語)の一種であり、データ分析や統計解析の分野で使用され、データの収集、分析、機械学習やアプリケーション開発に適している。別のプログラミング言語(C言語/Java)のように機械が処理できる言語(0と1のデータ群)に翻訳する必要がなく、シンプルで読みやすい文法でコードが書けるため初心者にも学びやすいプログラミング言語として知られている。

ーリモートではなく、現地での研修の目的は何だったのでしょうか?

服部:短期間で効率的に学ぶためには、研修に集中できる環境が重要と考えていました。

時差を利用して、通常業務の時間を区切り、研修に向き合う時間を確保できたことは、短期間でのスキルアップに大きく寄与したと考えています。
実際に現地の研修先では、材料開発の研究者人材が3、4割を占めており、材料のプロフェッショナルの方々から、身近で直接MIを学ぶことができた非常に貴重な機会となりました。
代表の山﨑からも「現地の雰囲気とカルチャーから、刺激を受けることは重要」とアドバイスをもらい、異国の地で、様々な人との関わりから新しい刺激を受けました。

経営管理部 MI推進チーム 服部

ーその成果はいかがでしたか?

服部:機械学習を進める上で必要なデータについて学んだことで、TBMのデータ蓄積における現状と課題を明確化できました。

機械学習モデルの精度を上げるには、データの量と質が共に重要です。特にデータの量が不足している場合や、データの中身が特定の要素に偏っている場合、モデルの精度が向上しないことも分かりました。

梁田:データの量と質に加え、必要なデータをタイムリーに集める重要性も実感しています。現在の状況では、経営判断や事業戦略を検討する際に重要な指標を含むデータを抽出する際の集計や、部門を跨いだデータ集約の効率性の点においては、まだまだ大きな改善の余地があると考えています。

#3. ものづくりベンチャーのDX化に関する課題

ー他に現状の課題はありますか?

服部:一部のメンバーからはデータ入力の負担を減らせないかという声が上がっています。様々な部門のメンバーを巻き込みながら進めていく上で、いかに効率的に必要なデータを集めていくかが肝となっています。

開発においても、現在は、メンバー個人の知見や経験、能力に依存している面がありますが、MIが実装できれば、効率性が上がることでチーム全体でアイデアを生み出す時間ができ、製品の付加価値を具現化する速度が圧倒的に上がると思います。

また、AIを「受け入れる」意識醸成も必要です。「仕事を奪われるかもしれない」と抵抗感を抱かれるという点は、DX活用の推進においてよく聞かれる課題でもあります。

梁田:「膨大なデータを分析し、問いに対する答えを素早く出す」という部分に関しては、AIの方が人間よりも得意だと考えた方がいいのかもしれません。そのため、データ入力の重要性の周知や、AIに寄り添った働き方へのマインドセットの変革は、今後も必要ですね。しかし、現状では、創造力や様々な状況に応じた柔軟な発想については、人間の方が優れていると感じているので、両者で補完し合って組織を前進させていくことが理想です。

#4. 全ては勝つ組織のため。今後「DX推進委員会」が推進していくこと

ーそれでは、今後DX推進委員会が取り組んでいくことについて、「営業系DX」「技術系DX」「オペレーションDX」の3つに分けて教えていただけますか?

■営業系DX(LIMEX事業・資源循環事業)

神山:営業・マーケティングの生産性向上のためのDXに、引き続き取り組んでいきます。組織として勝つために、蓄積してきたデータを活用して営業がより効率的に活動し、また顧客やパートナーとの継続的なエンゲージメントの強化を目指していきます。

梁田:営業DXで目指しているのは、顧客に選ばれ続けるTBMの新たな強み・武器を作ることです。そして、QCD(Quality/品質、Cost/コスト、Delivery/納期)の向上をしていきます。

■技術系DX(工場・テクノロジーセンター)

服部:製造業において、作る・売るのQCDをいかに高めるかに取り組んでいます。TBMの工場では工程によってデータを取れる仕組みはありますが、それぞれの工程で個別にデータを取っていて、連携できていないのが現状です。また、今後生産量が増えた時、人員増加に過度に依存しない生産能力の高い組織作りへの貢献も目指しています。

梁田:次工場の展開を見据え、DX基盤・仕組みを構築し、東北LIMEX工場をマザーモデルとすることを目指しています。まずは、入力するアプリケーション・データを蓄積するプラットフォームを一元化し、データ入力・集約・加工・集計に関わる工数を抑制します。そして、将来的には社内の誰もが、必要な時に必要なデータに安全にアクセスし、AIを活用した分析・予測ができるような環境を整えていきたいです。

■オペレーションDX(営業管理・管理本部・SCMなど)

梁田:主に業務効率化です。特に売上規模が大きくなった時に、過度に人員を増やさずに円滑なオペレーションを行える環境づくりに取り組んでいます。例えば、新しいワークフローシステムの導入や生成AIを使用した議事録の自動化なども重要なテーマに据えて、各部署で効率性を上げるための業務プロセスの接続と見直しを行っていきます。

#5. DXを推進し、TBMと世界の未来を変えていく

ーDXを推進することで、TBMをどのような会社にし、またどのような社会を実現したいですか?

梁田:DX推進委員会の活動を通じて、部門を横断し様々メンバーが交わり、ボトムアップで挑戦する、新しいことに躊躇せずに挑戦を楽しめる会社にしていきたいと思っています。1人1人が挑戦を積み重ねて、社員全員でTBMの目指すサステナビリティ革命の実現を目指していきたいです。

神山:質の良いデータを集め一元管理する仕組みと、それをメンバー一人ひとりが業務に活かし、ノウハウを共有することができれば、個としても組織としても強くなっていくと思います。またTBMがDX化のモデルとなって、グループ会社や他社にも良い影響を与えていけたらいいですね。

広報・マーケティング部 神山

服部:素材メーカーのQCDの底上げに貢献したいと考えています。今後、TBMの東北LIMEX工場と同様の工場を海外に建設するとなったら、同じ品質のモノを異なる地域でも生産できるようにすることが求められます。コストや調達の観点で考えると、現地の原料を使うことが不可欠ですが、どこで原料を調達して作ったとしても、最終的なアウトプットが均一にできる、そんな地産地消型のビジネスを、DXの力で実現したいです。そのノウハウを社会に還元できれば、日本のものづくり全体をさらに発展させ、海外進出の加速にも貢献できると思います。

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