1社目にプラスチック容器の製品開発、2社目に医療機器の技術開発に従事し、2021年9月にTBMへジョインされた窪田さんにインタビューを行いました!窪田さんの持つものづくりへのこだわりや、これからTBMのテクノロジーセンターで挑戦したいことなどについてお話しいただきました。
※業務内容は、インタビュー当時のものです。現在窪田さんは、SCM室 シート/生産管理チームに所属されています。
#1. メーカー2社を経てTBMへ。ものづくりに携わる中で、特に大切にすること
-テクノロジーセンターで研究職をされているわけですが、元々の専門分野はなんですか。
幼少期から化学が好きだったこともあり、大学では化学の道に進み、主に化学合成の評価を行っていました。
-化学が好きになったきっかけは覚えていますか。
あまりに幼い頃からなので、なぜ化学が好きなのかを考えたことはないのですが(笑)、なぜ海は青いのにお風呂の水は青くないのかとか、そういうことに興味がありましたね。身近に起きている何気ない事象の理由を、言葉にして説明できるところに面白さを感じていたんだと思います。だからか、先日、子供を寝かしつけるときも、「なぜ海の水はしょっぱいの?誰かがおせんべい落としたの?」と聞かれて、普通のお父さんなら「そうだね」とか答えるところなのでしょうが、「違うよ、長い時間をかけてイオンが溶け出して……」とか答えちゃいましたね(笑)。
-窪田さんもご両親からそんなふうな教育を受けたんですか。
富山県高岡市の出身なんですが、高岡って全国の銅像の9割を作っているんです。父親はその高岡銅器の伝統工芸士で、 東京・世田谷の桜新町駅前にあるサザエさんの銅像を作ったり、いまは主に仏像を作ったりしています。化学とは関係ありませんが、子供の頃からものづくりをしている姿を見ていたので、僕もものづくりをしたいというのが刷り込まれたのかもしれません。
-大学を卒業してからは、どういったことをされていたのですか?
大学では毎日フラスコを振ってるような研究ばかりでしたが、自分はそんなミクロの世界よりもマクロの世界の方に興味があるということに遅まきながら気づいて、1社目には飲料や食品などの容器を製造するメーカーに入社し、チューブ関連の容器開発に従事しました。製品開発の他にも押出成形のライン立ち上げを行い、成形について深く学ぶことができました。
2社目は医療機器メーカーのオリンパスに入社し、主に医療用バルーンの設計を行っていました。開発において、仕様を決めるためには製品に対する深い理解が必要なんです。なぜこのような外形、肉厚、形状、材質、装置・金型、製造条件にしなければならないのか、コストと品質の兼ね合いを図るためにも100%理解する必要があります。オリンパスでは、そんな開発において絶対に必要なエッセンスを身につけることができました。
1社目では比較的スピード感のある開発を行っていたのですが、2社目ではじっくり腰を据えて研究に打ち込むことができました。両社を経験することで、研究において必要なバランス感覚を身につけることができ、速いスピードの開発が求められるTBMでも絶対にやるべきエッセンスは何かを常に考えながら研究に打ち込んでいます。
-仕様を決めるためには製品を100%理解しなければならないという姿勢は、幼少期からの化学への興味がずっと生きている感じがします。ものごとの本質を何よりも重視されているのですね。
そうですね。LIMEXの難しいところの1つには、新素材であるが故にどの程度の強度が許容されるのかについて、お客さんも十分にわかっていないという点があります。その際に、徹底的に製品への理解を突き詰めたうえで仕様を決めることで、設定した目標値に理論的なお墨付きを与えることができます。これは前職の経験が活かされているところも大きいのですが、僕自身、理詰めで仕事を進めながら製品を理解したいというところはありますね。自分が納得行くまでデータを取って、さらに相手を説得するためにロジカル・プレゼンテーションの勉強をしたりとかしています。
#2. まだLIMEXが「すごい素材」だとは言いたくない。技術に対する強いこだわり
-現在はTBMでどんなことをされているのですか?
主力製品の1つである「LIMEX Bag」の開発をしています。最近、新しい拠点で製造を始めたのですが、そこでは主担当として取り組んでいます。他には海外の法規制への対応であったり、フィルムの新しい用途開発について、営業の人とお客さんのところに行って一緒に技術者の立場から説明したりすることもあります。
これまでにはベトナムにおけるLIMEX Bagの製造拠点の立ち上げにも携わりました。TBMに入社したのは2021年9月ですが、11月にプロジェクトに参画、その年の年末までに量産開始という非常に短期間でのスケジュールでした。スケジュールに間に合わせることはもちろん、いかにコストを抑えるかというのが最も大きな課題だったんです。その時に、まずは製品を理解し、現地の工場長とディスカッションを重ねることでコストを抑えた上でいかに製造するのかについて新しい手法を見つけることができました。そして無事に、当初の計画通りに量産を間に合わせることができました。偶然、年末のSame Boat Meeting*の日に量産が開始されたのですが、その日は休憩中ずっと「Zalo」(ベトナムで広く使われているメッセージアプリ)をチェックしていましたね。
*Same Boat Meeting:TBMで月に1回開催される全社集会
-技術者の立場から見て、LIMEXのどこが革新的だと思いますか?
期待されている答えではないかもしれませんが、LIMEXの革新性は”コンセプト”だと思います。プラスチックや紙を代替するというコンセプトがしっかりしていて、懐が深いというか、可能性の広がりを感じさせる。無機物を多く含んだプラスチックの複合素材って、捉えようによってはこれまでもたくさんありました。でも、それらにはないLIMEXの持つ可能性に惹かれて、技術者たちが集まってきています。
実際、海外で売られているマスターバッチ(プラスチックの添加剤)に比べて、LIMEXは品質が非常に高いです。ただその一方で、強度や機能性について、既存のプラスチックや紙に近づける余地はまだまだ残っています。なので、「技術的にすごい」とは正直まだ言いたくないですね。これから我々がやらないといけないことはたくさんあり、LIMEXを様々な用途に広げるために、私たち技術者は日々開発に取り組んでいます。
#3. LIMEXを通じて、世の中の常識を壊したい
-最後に、窪田さんのこれからについてお聞かせください。まず、今後LIMEXをどのような分野に広げていきたいですか?
スーパーなどの一般の人が手に取れるようなところにLIMEXが並ぶようにしたいです。1社目で容器開発に従事する中で、自分の開発した製品が身近に手に取れる量産品の面白さを知りました。それに加え、「世の中にはない新しいものをつくりたい」という技術者としてのワクワクを感じ、”人生最後のチャンス”だと思ってTBMに入社したという経緯があります。一度特定の業界でLIMEXが採用されると、その業界に属する他の企業にも採用が広がるかもしれません。だからこそ、最初からいい加減なものを出すことはできない。最初の採用事例だからこそ、その後のお手本になるような設計が必要なんです。
-他に、TBMでやりたいことはありますか?
それと、LIMEXを通じて今までの常識を壊せるようなことをしたいです。例えば、ミネラルウォーターの「いろはす」はベコベコとつぶせるペットボトルが特徴的ですが、あれを初めて見たとき、僕はすごい衝撃を受けたんです。「こんなにベコベコしたボトルでいいんだ」と。同じように多くの人が最初は違和感を覚えたでしょうが、そのうち受け入れ、今は誰も違和感なく受け入れていると思います。これこそ、「世の中の常識をぶち壊した瞬間」と言えるのではないでしょうか。勢いがある会社は、消費者を「これでいいんだ」と納得させ、業界のルールや常識を壊せる可能性がある。それを、LIMEXで起こしていきたいと思います。
-ものごとの本質を大事にする窪田さんらしいお話でした。ありがとうございました!